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     歌う医学博士・Hideが行く
                        */

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  Vol.93. 医療の荒野を耕そう(その1)
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こんにちは。Hideです。


今回は珍しく、お叱りのお便り(メール)が2通来た。まあこれも、応援のうちだ。
どうも有り難う。

先着順に紹介しよう。マサキさんからのは、下記の通りだ(以下引用)。

「歌う医学博士・Hideが行く」って、いつもこういう内容のメルマガなのですか?
なんか看板に偽りありって感じですね。購読解除しました。

東京都 マサキ

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STOP HIV/AIDS.
Yahoo! JAPAN Redribbon Campaign

(引用終わり)

購読解除された方から、お便りを頂いたのは初めてだ。とても参考になった。

僕の返事は、以下の通りだ(以下引用)。

お便り有難うございます。

当メルマは、ふだんはタイトル通り医療と音楽の、どっちつかずのメルマです
(本当は音楽ネタをもっとやりたいのですが、読者の方のご要望もあり、
医療ネタは前ふりでは、極力毎回書いてます)。ご興味がお有りでしたら、僕のHP

http://www.helio-trope.com/

の、「メールマガジンバックナンバー」をご参照下さい。

ただたまには、僕も現代社会に生きる一人の人間ですので、今回のように
社会問題ネタをやらせて頂きたくなる事もあります。そういうわけで、
ああいうメルマになりました。悪しからずご了承下さい。

それでは、あなた様のご健康とご多幸をお祈り申し上げつつ、
筆を措かせて頂きます。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
Hide
E-mail : hide@helio-trope.com
http://www.helio-trope.com
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

(引用終わり)


お次は、前回登場されたゆうこさんからのご返事だ(ちなみに、今週の火曜に来た。
メルマの発行は、隔週くらいがいいのかも知れない(笑))。僕は民主主義者なので、
このお方に言論の場を提供したい。従って、ノーカット無編集で引用させて頂く
(但し改行がなく読みづらいので、改行だけはさせてもらった。悪しからず。以下引用)。


こんばんわ!物凄くお元気なので、大笑いさせて頂きました。今やっとメール
開いたところなので、間が空いてしまいました。 あの、お医者様って物凄くお遊びで
いらっしゃるんでしょう? 天童から秀才やって来られて、どうしてそのように
単純お元気でいられるのでしょうか?ほんまにびっくりしてしまい、悪いけれど、
笑い止りません。医師会や医療連合さんは、なんとおっしゃっていますか?反戦デモで
医療連合の旗見ましたよ。普段どのような御本をお読みですか? 学生運動の経験は? 
私は、いくつかのNGOの報告書や、市民団体の会報や集会、デモ、に参加させて
頂いたりしていますが、勉強不足ですし、個人的にもかなり攻撃を受ける事も多いですし、
逮捕の危険さえある時代なので、今日は楽しく話していても、明日は、まったく
み見ず知らずの人間で居るべきのようで、共謀罪を意識してか、かなりの注意が
必要のようです。らくがきメールにさえ監視が入り、家庭では、政治的な事は、
絶対にしゃべるなと、16歳の息子も何枚舌か使いたいへんな思いのようです。
私は病院のへルパ-ですが、有事派でないので、もうリストラ寸前です。
戦争を心から面白い!楽しいと思える看護士しか上になれないようです。驚きです。
確かに、読書に興味などないようです。事務所でも、「子育てする女はあかんな。」と
言っております。確かに、戦争協力する子供に育てたいので、哲学的育児書とか
読まれたら、大変なので、産みまくり、すぐ夜間でも保育所に預け、お金儲けの為、
ストレスを私達や子供、時に患者様に、向けられる人間がよろしいようです。
まあ、現実は凄まじい!先生も外国行って見られたら?天木直人さんのメルマガで
話したり、「前夜」などお読みに成られたらいかが!昨日GREENPEACEから
六ケ所の再処理工場の稼動を止めよう! がきました。今日は、国境なき医師団から。
無実の人の拷問、拘禁、虐待、!思想なにも、自由弾圧されないように軍部に
国を渡してはだめ!歌なんて、自由に歌えないですよ。先生は、内の看護士さんと
飲みに行けばいいかな?ファル-ジャどう思われます。劣化ウランは?私より上の方に
メ-ルして今までと違うあなたを楽しみにしております。 ゆうこ のお兄様も
有事派ですが、イラク攻撃反対で、死刑制度反対ですよ。カントとか読まれますか?
私があなたのIQならいいのにね。 残念! では、明日も元気で頑張りましょう。
監視の人へ、  ^^^korekaitarasyobunnkana? mou sukoshi shigoto kudasai to
nani dennwa ireru hi asu nano. tasukete! syobunn Turn Down!
ni shitekudasai.onegai!と、泣きまくる!隆行のお兄様 
飲みに行こうね!と伝えるゆうこでした。 2004.・12・14  ひでさん 
「国際戦犯民衆法廷」のカンパや報告書お願いします。「兵士の声 家族の声」なら
100円!百万人署名運動から辺野古行きませんか?2万円出るらしいよ>ではね。

(引用終わり)

僕が前回提出した疑問の回答には、余りなっていないように思うので(こんな事だから、
「単純お元気」とおっしゃられて笑われるのだろうか?)、僕もこれ以上のコメントは
差し控えさせて頂く事にする。評価は、読者の皆さんの英知に委ねたい。この件について
ご意見がお有りの方は、僕のHP

http://www.helio-trope.com/

の、「掲示板」へどうぞ(どうせ休眠掲示板なので、せいぜいご利用頂ければ、
掲示板も本望だろう)。


さて本題。医療ネタがお好きな方々を、2回お待たせしてしまったので、今日こそ書く。
お待ちどうさまでした。

以前にも言った通り、僕はバイト先の病院に(以下「B2病院」とする)、
週2日行っている。外来は、これも以前言った通り、週1回午前中やっている。
一応、糖尿病外来だ(糖尿病でない患者さんも、何人かはおみえだが)。

実は僕は大学の医局で、糖尿病グループにいた。うちの医局は、伝統的に消化器系とかが
強い所だったが、僕はその中で、あえて糖尿病グループを選んだひねくれ者だ。

どうしてかと言うと、もともとは胃カメラや大腸ファイバー(カメラの事だ)等をやる、
「内視鏡(これもカメラの事)」のグループに入ろうと思っていたのだが、
どうも虫が好かない先輩が多かったからだ。また胃カメラや大腸ファイバーは
ともかく、"ERCP" と言う膵臓とかの検査とか、「静脈瘤」という食道や胃の血管のこぶ
(破裂すると大出血する)に対して、カメラを使って注射して治す治療とか
(「硬化療法」と言う)、そういう特殊な事が出来ても、開業したら余り役に立たないと
思ったのもある。

でも一番の理由は、糖尿病グループのボスが好きだったからだ(兄弟子や姉弟子とは、
余りウマが合わなかったが)。

話を元に戻そう(大学での修行時代の話は、機会があればまたもっと詳しくしよう)。
そういうわけで、今回初めての糖尿病の専門外来だったので、そういう意味では
うれしかった(B病院(僕のHP

http://www.helio-trope.com/

の、「メールマガジンバックナンバー」の、Vol.11, 1215あたりを乞うご高覧)でも
専門外来はあったが、胃カメラが出来るからという、ただそれだけの理由で
消化器グループに配属されたので、消化器の専門外来をやっていた)。

ところがどっこい、ふたを開けてみると、これがまさに「医療の荒野」だった。
以前にも書いたが、有名病院だから立派な糖尿病外来かと思っていたら、
これがとんでもハップンだった。

これが何故かを説明するためには、糖尿病に関する知識が必要だ。ある先生が、
糖尿病について素人さん向けに、とても分かりやすい文章を書いている。
匿名を希望されているので、お名前は出さないが全文を引用しておこう(以下引用)。

糖尿病の話

私の専門であります、糖尿病のお話です。

日本の糖尿病人口は、誰がどういう数え方をしたのか知りませんが、500万ないし
600万人だそうです。 私の外来での印象でも、高血圧などとの比較ですが、その位は
いらっしゃるような気がします。つまり結婚式で100人集まれば、5人くらいは
患者さんがいるという事になりますね。しかしこれほどポピュラーな病気ですが、
どうも余り正確に知られているとは言い難いようです。これから私が、その誤解を
一つ一つ解きほぐして行く事にしましょう。

さて物を正確に知るには、まず定義(「定義」と申しますのは、糖尿病なら
「糖尿病とはどんな病気か」という事です)に帰る事でしょう。現在の医学界での
糖尿病の定義は、大体こんな所です。

「インスリン作用の絶対的または相対的な不足により起こる、高血糖を中心とした
種々の代謝異常」

どうかここで読まれるのを止めないで下さい。これだけで済ます気はもちろん
ございません。この中の言葉をーつーつ解説致しましたら、糖尿病の本体に迫って行けると
思えばこそです。

まず「インスリン」とは、「血糖」即ち血液の中のブドウ糖(砂糖ではありません)を
減少させる「ホルモン」です。ホルモンとは、体の中の臓器--インスリンの場合は
膵臓一−から血液の中に放出され、血液の流れに乗って体の他の器官に到達し、
その働きを調節する物質の事です。ちなみに「ホルモン焼き」とは何の関係も
ございません。私たちの体の中には、実に多種多様なホルモンが有りますが、
血糖を下げる方向に働くホルモンはインスリンだけです。いかに低血糖が恐ろしいか、
これでお察し頂けるのではないでしょうか。

私たちの血糖は、これらのホルモンによりまして、朝一番の食前でしたら64から
110ミリグラム毎デシリットル(以下単位は略します)に通常保たれています。
ちょうど財布の中身のようなものですね。100万円持っているからと言って、
それを全部財布に入れて持ち歩く人は普通いないでしょう(今は亡き城南電気の
社長さんは別ですが)。人にもよるでしょうが、90から95万円くらいは銀行に
預けておくのではないでしょうか。

血糖が財布の中のお金だとしますと、銀行は主に肝臓や筋肉や脂肪組織などの「細胞」
-一身体を作る最小単位--です。糖はこれらの細胞で、貯蔵されたり利用されたりします。
細胞銀行には、「血糖を預金したい」と言うインスリンの要求を聞く窓口のような所が
有り、これを「受容体」と申します。しかしこの受容体窓口は、サービス業に
あるまじき事ですが、余りインスリンが増えると減ってしまいます。結果として
インスリンの「作用」-一働きの事ですーーは減少し、血糖は上がってしまいます。
肥満が糖尿病を誘発し、また悪化させるのは、この窓口閉鎖が起こるからです。
また糖尿病の患者さんではインスリン作用が不足しているのですから、無駄使い
ー―過剰に栄養分(特にカロリー)を体に取り込み、インスリンの負担を増やす事−−は
良くないのはお分りですね。

「甘い物を食べると糖尿病になる(あるいは悪くなる)」とお考えの方もいらっしゃる
ようです。もちろん甘い物の食べ過ぎは良くは有りませんが、甘くない物でも同じ事です。
1日の制限力ロリーを指示致しますので、どうかその範囲内でお召し上がり下さい。
これをまとめますと、

「甘い物を食べなくても糖尿病になる。逆に甘い物を食べても糖尿病にならない事も
いくらでもある。」という事です。

次へ進みましょう。「絶対的または相対的」なインスリン作用の不足ですが、
絶対的に不足する場合は「インスリン依存性糖尿病」、相対的な湯合は「非インスリン
依存性糖尿病)と申します。しかし糖尿病患者さんの 90-95%は後者ですので、
これからは後者を念頭に置いて話を進めます。前者についてーつだけ。前者の場合は、
インスリンが絶対的に不足しているのですから、最初からインスリンを外から
--つまり注射で−−補わないと生命が維持できません。ちなみに昔ジャイアンツに
いましたガリクソン投手はこのタイプです。後者につきましては、生存のためには
通常インスリンは必要ではありません。

折り返し点を過ぎました。「高血糖を中心とした」ということは、糖尿病の診断は
血糖で行うという事です。朝一番、食前の血糖(空腹時血糖と申します)が126以上、
または時間を問わず(随時血糖と申します)200以上なら糖尿病と診断します。

ここで申し上げたいのは、「糖尿病」という名前だからと言って尿糖で診断するのでは
ないという事です。尿糖は、血糖が170〜180以上にならないと普通出て来ません。
従いまして特に空腹時の尿では、糖尿病の基準を満たす血糖でも、軽症の場合尿糖が
出て来ません。逆に「腎性糖尿」と申しまして、170や180よりもっともっと低い血糖でも
尿糖が出る、一種の特異体質の方も結構いらっしゃいます。こういった方に糖尿病の薬を
お出しして、低血糖で亡くならせてしまった不勉強な医者もかつていたそうです
(普通医者の試験のとき、勉強すると思うのですが...)。以上まとめますと、

「尿に糖が出るからと言って糖尿病とは限らない。逆に尿に糖が出 ないからと言って
糠尿病でないとは限らない。」という事です。

さて、空腹時の血糖は110が上限だと前に申しました。それなら111以上126未満の方は
どうなるのかと思われるでしょう。こういった方は、「ブドウ糖負荷試験」と言う
精密検査をやって、果たして糖尿病なのか、それとも「境界型」、つまり病気とも正常とも
つかない状態なのかはっきりさせねばなりません。それは治療方針が違ってくるからです。
基準値等につきましては割愛させて頂きますが、負荷後2時間の血糖が200以上なら
糖尿病である事だけ申し上げておきましょう(前述の随時血糖の基準と同じですね)。

ちなみにホルモン系の病気や肝臓病などでも、血糖が増加する事がありますので、
この検査がそういった病気と区別をつけるのに役立つ事もあります(まあその目的では
めったにやりませんが...)。また膵臓の病気のためインスリンの分泌が減る事も
有りますので、一度はおなかの超音波(エコー)もしておきましょう。

最後に「種々の代謝異常」ですが、代謝とは栄養分が私たちの体内で分解されたり、
逆に合成されたりする事です。先程申しました、糖の貯蔵--この際糖はさらに
大きい分子に合成されますー一や分解も代謝です。しかし糖尿病では、糖だけでなく
脂肪やたんぱく質の代謝も異常をきたします。ですから血糖さえコントロールすれば
それでいいというものではありません。必ずコレステロールなども定期的に測りましょう。

さて、そもそも血糖コントロールがなぜ大切なのかと言う事ですが、それは
「風邪は万病のもと」ならぬ「糖尿病は万病のもと」だからです。コントロールが
良くないと、身体中の血管が傷んで来ます。「糖尿病は血管の病」とも言えるでしょう。
糖尿病に特有なのは細い血管の障害で、目−−正確には「網膜」と言う光を感じる所−−や
腎臓、神経などがだめになって行きます。目がだめになると失明しますし、腎臓だと
週に3回3時間人工腎臓につながれ、好きなものもなかなか食べられなくなります。
また動脈硬化も起こりやすく、ひいては心臓発作や脳卒中に結びつきます。
こういった害を、「合併症」と言います。またガンも発生しやすいですし、
いろいろなばい菌による病気も起こります。但しコントロールが良ければまず大丈夫です。
以上まとめますと、

「糖尿病は決して怖くない(ただしコントロールが良ければ)」と言う事です。

コントロール目標は一概には言えませんが、是非ともクリアーしたいレベルは、
空腹時血糖140以下、随時血糖(普通食後2時間)200以下、あとヘモグロビンA1cと言う
最近1-2か月の血糖コントロールを示す検査が7.0%以下、また血液中の脂肪正常、
標準体重の維持、合併症の進展が無い事などです。合併症の検査にもご協力下さい。

最後に治療法ですが、前述の食養生と場合により運動が基本です。それで
コントロール困難なら、例によって薬の出番です。一番良く使われているタイプの薬は
インスリンの分泌を促し、また細胞でのインスリンの働きを強めます。それでも
まだ駄目なら、インスリン注射の出番です。

副作用についてーつだけ。薬も注射も、低血糖が起こる危険はやはりどうしても有ります。
いいコントロールを達成するための必要悪でしょう。冷や汗、動悸、異常におなかが
減ったり意識が薄れる等の症状があれば、すぐ砂糖を飲んで下さい(但し糖分の吸収を
押さえる薬をご使用の方は、ただの砂糖では効きません。我々が処方致しました
ブドウ糖をご使用下さい)。それでも効かなければ、すぐに最寄りの病院に
いらして下さい。重症の低血糖が長引くと命にかかわります。またご注意をーつ。
薬や注射を増やしてカロリーをたくさんとろうなどと考えないで下さい。
とった栄養が身につきすぎて肥満し、効かなくなってまた薬や注射を増やして
また肥満して...のいたちごっこになります。

それでは皆様、どうかお大事になさって下さい。

(引用終わり)

次回からはその外来が、具体的にどうひどいのか、そして僕がそれをどう
立て直そうとして、どう苦労しているのかを書いて行く。それまで、この文章で
予習しておいて下さい。



最後まで読んでくれて、本当に有難う。ご意見、ご感想、ご質問等は

hide@helio-trope.com

までどうぞ。「こんな話が聞きたい」というリクエストも大歓迎だ。
(ここで紹介させてもらう事が有るので、それを希望されない方は
乞うご明記)


それとくどいようだが、このメルマのバックナンバーが、僕のHPで読めるので、

http://www.helio-trope.com/

の、「メールマガジンバックナンバー」を乞うご高覧。デワマタ。