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     歌う医学博士・Hideが行く
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  Vol.46. ナラとジョイスとカリオカと(ボサノヴァ講座中級編・その8)
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こんにちは。Hideです。


まずは前回のアンケートにご協力下さった方、どうも有り難う。


Heliotropeは3曲目のレコーディングに取りかかった。あの愛国ソング、
「遠くに在りて君を想ふ」だ(詞とセルフライナーノーツは、僕のHPで読めるので、

http://heliotrope.s9.xrea.com/

の、「Hide詞集」の「」を乞うご高覧)。昨日オケを入れ終わった。
後はヴォーカルとコーラスを入れるだけだ。

昨日フルアルバムを作る事が決定したので、どうやら秋まではスタジオワークに
明け暮れしそうだ。冬にはライヴをやりたいものだが。またその時は、
応援にいらして下さい。

話は大きくなるが、僕はスタジオでしか活動しなくなった「サージェント・ペパーズ...」
以降のビートルズよりは、常にライヴに活路を見出し続けたストーンズの方が、
やはりロックバンドとしては健全な姿だと思うのだ(Helioは多分、
ロックバンドではないが)。まあもちろんビートルズがスタジオでしか
活動出来なくなったのは、当時の彼らの客のせいなのだが。

「ライヴというのは、やる奴がいて聴く奴がいるという、音楽の一番根源的な
形態なのだから。そしてレコードというのは、あくまでそれを再現するための
物なのだから」と、昔どこかのキーボード弾きが言っていたが、僕もそう思う。

マイクに向かって歌っていると、尾崎亜美さんのこんな言葉を思い出す。

「ライヴアルバムは出さない。でも一見矛盾するようだけども、
レコーディングはライヴのようにやりたい。」

これはなかなか含蓄のある言葉だと思う。多分彼女が言いたいのは、レコーディングは
やり直しがきくが、ライヴはそれが出来ないので怖いという事だろう。また
「レコーディングだからと言ってノンエラー主義の、生気のない歌は歌いたくない
(彼女の場合、演奏もしたくない)」という事だろう。

彼女のレヴェルでもやはり怖いのかと安心しつつ、いまだにミスをしないかと
びくびくしつつ歌っている自分のレヴェルは、何とかしなくてはと思う。


さて医療の方は、ここのところ平穏な毎日だ。

ただ診察の時いきなり服をまくり上げる人や、血圧を計ると言うと袖をまくる人、
また診察をすると言うといきなりベッドに寝転がる人が(少なくとも外来では、
いきなり患者さんを寝させる内科の医者は圧倒的少数派だ)、病院はもちろん
クリニックにさえも、未だに結構いる(特に前2者)のは困った事だ。
特に診療が忙しい時は、この説明に要る無駄な時間を、他のもっと有意義な事に
振り向けられたらどんなにいいだろうと思うと、実に歯がゆい。

まあ世の中には、首のリンパ腺を見ないとか、血圧をいいかげんに済ますとか、
そういう手抜き医者が余りにも多すぎるからだろう。「悪貨は良貨を駆逐する」という
グレシャムの法則が、医者の世界にも当てはまるようだ(このあたりの事は、僕のHP

http://heliotrope.s9.xrea.com/

の、「メールマガジンバックナンバー」のVol.18を乞うご高覧)。

読者の皆さんにお願いしておく。どうかいきなり、服をまくり上げないで頂きたい。
血圧の時は、袖をまくらないで頂きたい。診察だからといって、いきなり寝転がらないで
頂きたい。

もしそれで怒るクズ医者がいたら、心の中で笑い飛ばして、見限って頂きたい。


それでは本題。ボサノヴァ講座だ。長かったが、今回でジョイスにはけりをつける。

Get's Bossa Nova cerebrate 40 years!! (ポニー・キャニオン)

というアルバムが有る。

これは名前の通り、ボサノヴァ誕生40周年記念のオムニバスアルバムだ。以前言った
ワンダ・サーやロベルト・メネスカルの他にも、ジルベルト・ジル、イヴァン・リンス、
パウロ&ダニエル・ジョビン(ジョビンの息子たちだ)、カルロス・リラ、
マルコス・ヴァーリ、クララ・モレーノ(ジョイスの娘)、オス・カリオカス...と、
そうそうたるメンバーが、それぞれ一曲ずつパフォーマンスしている。

しかしやはりピカ一は、ジョイスの "Nara" だろう。

これは読んで字のごとく、ナラ・レオンへのデディケートナンバーだ。こんなに美しい
バラード・ナンバーはめったに無いだろう(曲はロベルト・メネスカルの
ペンになるものだ。「小舟」とかもそうだが、やはり大した才能だ)。

そして、ジョイスのペンになる詞も素晴らしい。彼女のナラへの尊敬の気持ちが、
ひしひしと伝わって来る。ちなみにこの曲を歌い終わったあと、
彼女は泣いてしまったそうだ。

訳詞を引用しておく(無断ですけど、宣伝になりますし許してくれますよね、
ポニー・キャニオンさん?)。

歪んだ月が
レメの海へ昇っていく
青白い翼を優しく広げ
その時がきたことを告げる
コパカバーナが
おぼろな光の中で泣く
甘美な時が 涙のように点滅し
オーロラの光に ゆったりと輝く
ナラの風景
そこでは ありとあらゆるミュージシャンたちが
ナラの色に染め上げられる
ナラの朝
そこでは リオが幾千もの歌に彩られて
夜明けを迎える
幸福な時代の思い出
私たちの世代を豊かにしてくれた夢
ナラ
千のサンバと千の詩人が
あなたを讃えているわ
賛歌は今もイパネマから立ち昇り
グアナバーラの空を照らしてる

(引用終わり)

ちなみに今この曲を聴いていると、次のトラックのジョビンの娘の下手な歌が
聴こえて来て、余韻がぶち壊しだ。中原仁とか言う評論家が、ライナーノーツで
「ブラジル版アンフォーゲッタブル」などと言っているが、それはいくら何でも、
ナタリー・コールに対して失礼というものだろう。皆さんにはTrack5は、
とばして聴かれる事をお勧めする。

そう言えば一曲目は「デサフィナード」で、これは前述の豪華キャストがワンフレーズずつ
歌っている。こちらは「ブラジル版ウイアー・ザ・ワールド」の名に恥じないだろう。


あとジョイスが他人のアルバムに参加している例としては、僕の好きなのには

クレモンティーヌ/レ・ヴォヤージュ(ソニー・ミュュージックエンターテイメント)

がある。「トリステーザ」がイチ押しだ(残念ながらジョイスはこの曲には
参加していないが)。

熱心な読者の方(特にボサノヴァ講座の)は、「トリステーザ」という曲を
ご記憶かも知れない。そう、アストラッド・ジルベルトの時紹介した曲だ。
実にノリがいい。実は僕はこの曲をラジオで聴いて、このアルバムを買った。


シブいところでは、

ワンダ・サー&セリア・ヴァス/ブラジレイラス

をお勧めする。どの曲がという事はなく、全体にいい。
ちなみに「ブラジレイラス」とは、「ブラジル女性たち」という意味のようだ。


2ヶ月かけて、ジョイスシリーズをやっと大過なく締めくくれた。
次回からはアナ・カランで、中級編の最後を飾りたい。乞うご期待。


最後まで読んでくれて、本当に有難う。ご意見、ご感想等は

hide@helio-trope.com

までどうぞ。「こんな話が聞きたい」というリクエストも大歓迎だ。
(ここで紹介させてもらう事が有るので、それを希望されない方は
乞うご明記)


それとくどいようだが、このメルマのバックナンバーが、僕のHPで読めるので、

http://heliotrope.s9.xrea.com/

の、「メールマガジンバックナンバー」を乞うご高覧。デワマタ。