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  総集編6. 憲法第9条を改正しよう(完全版)
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今回は、Vol.54からVol.56までの内容を、ブラッシュアップして
一つにまとめておく。

例の中国の原潜の領海侵犯に対して、政府の対応があの体たらくなのも、
北の拉致問題について何ら効果的な手を打てないのも、全ては憲法第9条のせいなのだ。
そういうわけで、今ほどこの話題がタイムリーな時はないだろう。

ちなみに小林よしのりさんが、「拉致はテロではなく、日本の国家主権への侵略だ。
恐怖を与えねばテロとは言わぬが、彼らはこっそりとやっているので、恐怖を与えるのは
おろかその事実の存在さえ、日本国民には長らく知られてこなかったのだから。」と
言ったが、実にもっともだ。日本はこの侵略に対して、名目はともかく賠償金を払って、
戦わずして降伏したわけだ。これがイスラエルなら、即刻特殊部隊を派遣しているだろう。

なお自民党が、憲法の改正案を発表したが、決してそれに便乗したわけではなく、
僕はそれ以前から機会をうかがっていたので念のため。ではスタート!



憲法第9条を改正しよう


1.序論

そもそも何故、今の日本に軍備は必要なのだろう?

その答えは、「戦争は日本を放棄していない」(奥宮正武著、PHP研究所)
という本にある。著者は元海軍中佐で、航空自衛隊の元将軍だ。

この本の要旨は、大体こんな所だ(以下「引用」)。

日本は貿易立国である。という事は他の国から工業原料等を売ってもらったり、
製品を買ってもらったりしなければ、生存そのものがおぼつかない。

さて物を売ったり買ったりするには、その代金を払ってもらえたり、
製品を渡してもらえたりするのが確実である事が前提になる。

それではその代金や製品が、いつ侵略国家やテロ組織に奪われるか分からないような
状況だったらどうだろうか?

これは例えば、「もし銀行が掘っ立て小屋だったら、そこにお金を預ける気に
なるだろうか?」と言いかえてもいい。まずそんな気にはならないはずだ。
いつドロボウが小屋を壊して、お金を持っていくか分かったものではない。

やはり銀行が立派で頑丈な建物で、ドロボウもなかなか入れそうにないからこそ、
お金を預ける気になるのだろう。それと同じ事だ。

だから現在、そして予測されうる将来において、日本にある程度の軍備は必要なのだ。

(「引用」終わり)

つまり外敵が侵入するかどうか以前の問題として、軍備はこの国の生存に必要なのだと
いう事を、僕はこの本で知った。

ちなみにこの本は、現在絶版のようだ。是非とも再版して欲しいものである。


2.改正案の目的

「この国が二度と侵略戦争をする事がなく(まあ少なくとも、近い将来には
ないだろうが)、かつ自衛戦争をとどこおりなく行えるようにする」事だ。
Vol.44で言った通り、僕は侵略戦争は絶対悪でありかつ不必要悪だが、
自衛戦争は独立国家にとっては必要悪であり、また義務でもあると思っているので。


3.改正案

第9条(国防省ならびに国防軍の設置と、自衛のための交戦権)

第1項:日本国はその領土、領海、経済水域とそれらの上空、ならびに必要に応じ
    その周辺において、自衛戦争を行う権利と、そのために準備を行う義務を有す。

第2項:前項の目的を達するため、日本国は国防軍を保有す。

第3項:国防軍の戦力は、自衛のための必要最小限度とす。

第4項:国防軍の監督と運営のため国防省を設置し、国防大臣をもってその長とす。

第5項:国防軍の最高指揮官は、内閣総理大臣とす。内閣総理大臣が止むを得ない
    事情によりその職務を遂行できないときは、別途法令で定める者がこれを代行する。


4.総論

僕は、この改正案の目的は、「この国が二度と侵略戦争をする事がなく、
かつ自衛戦争をとどこおりなく行えるようにする」事だと書いた。

おそらく憲法に書くまでもなく、この国が侵略戦争をする事は、少なくとも近い将来には
ないだろう。予測される将来にもないと思う。

というのはどんな超極右団体でも、「中国本土に再侵攻して満州国を再建しろ」とか、
「韓国や台湾を再併合しろ」とか言っているのを、僕は聞いた事がないからだ。
よしんば臆面もなく言ったとしても、誰も相手にしないだろう。

つまり「侵略戦争は二度としてはならぬのだ」という事は、この国においては
すでに国民的合意として、確立されていると言える。

話はそれるが、今の中国のやっている事言っている事というのは、例えて言えば
現役のドロボウが、更正してカタギになった人に向かって、「お前昔ドロボウやったやろ、
反省せんかい!」と言っているのと同じなのだ。笑止千万である。

というのは彼らは、チベットやウイグルや、内モンゴルを目下侵略中で
いらっしゃるのだから。ついでに言えば、台湾や南沙諸島や尖閣諸島を、
虎視眈々とねらっておいでなのだから。

まずご自分が侵略をお止めになってから、よその国をご批判に及んで頂きたいものである。

話を元に戻そう。にもかかわらずあえて憲法に書こうというのは、
「契約は言葉にせねばならぬ」というのが国際常識──少なくとも欧米社会の
──なので、彼らのレヴェルに合わせてあげようという事である。
「以心伝心」は彼らには通用しないようなので。


5.各論

「第1項:日本国はその領土、領海、経済水域とそれらの上空、ならびに必要に応じ
    その周辺において、自衛戦争を行う権利と、そのために準備を行う義務を有す。」

→これは国連憲章でも認められた、独立国のごく当然の権利だ。

しかし当然の事でも、憲法に明文化しておけば、絶対平和主義の極楽トンボな方々の目も、
いくらかは覚めるだろう。

それと現在の法体系は、「軍隊は存在しない」という事が前提になっているので、
軍隊を運営するにはいろいろ不備が有る。それを改善させるためにも必要だ。

例えば軍法会議を設置する事は、現行法では出来ない事になっている。ということは
普通の法廷で、軍事機密に関する証拠のやりとり等をせねばならぬが、そうすれば
弁護士等を通じて、外国のスパイに情報が洩れる事も防ぎ得ない。

「必要に応じその周辺」と書いたのは、日本のように国土が狭い国では、領土に敵が
来るまで待っていては遅いからだ。それはある程度軍事常識のある人なら、
すぐに分かるだろう。イスラエルに世界最強のスパイ組織・モサドがあるのは、
この空間的な奥行きの浅さを補うためだ(ちなみに第4次中東戦争では、
諜報機関はちゃんと仕事をしたが、時の政府がその成果を生かせなかったため、
イスラエルは完全な先制奇襲を食い、一時は核ボタンに手をかけようとまで
したようだ。この責任をとって、ゴルダ・メイア首相はその後辞職した)。

少なくとも僕は、座して死を待ちたくはない。

空間的に範囲を限ったのは、侵略はしないという決意を表明するためだ。


「第2項:前項の目的を達するため、日本国は国防軍を保有す。」

→これは現状追認であって、現状追認でしかない。それは第4項と第5項についても
言える事だ(第1項もそうかも知れない)。

おそらく現在の自衛隊が国防軍に、防衛庁が国防省に、そして防衛庁長官が、
国防大臣になるだけだろう。

しかしたかが現状追認、されど現状追認だ。今まで憲法上にその根拠を持たず、
日陰者状態だった自衛隊員の皆様を正当に遇するためには、是非とも必要な事だろう。

どこの国でも、軍人の方の献身には、経済的には応え切れない事を知っている。
だから名誉ある取り扱いを以って、彼らを遇するのだ。

例えばアメリカの議会では、将軍を召喚する時には、例え退役していても、必ず名前に
「将軍」をつけて呼ぶ。また入室の際には、全員が起立して拍手するそうだ。

自衛隊の志方俊之元陸将は、その著書「自衛隊に誇りを(小学館文庫)」の中で
こうおっしゃっている(以下引用)。

軍隊というのは、自分たちの力が使われることがないのがベストであるという仕組みを
持った集団である。自衛隊が本来の目的で国家のために役立つ時は最悪の事態なのだ。
だとすれば、自分たちが一生を通じて培ってきたものが全く役に立たないことが一番いい。
これは大変なプレッシャーである。

(中略)

青函トンネルが完成するまでには二十五年間という長い年月がかかっている。
そしてその途中で三十三人もの人が事故で亡くなったと聞いている。しかし、
もしトンネルが完成しても列車が一両も走らない事が一番いいのだと言ったら、
建設に従事した君たちの努力が全く無駄に終わる方がいいのだと言われたら、
誰がそんなトンネルを掘るかということだ。誰も掘りはしないだろう。

しかし、軍人というのはそういう存在なのだ。(引用終わり)


「第3項:国防軍の戦力は、自衛のための必要最小限度とす。」

→この条文で、侵略はしないという決意は、さらに明確に示せるだろう。

そして現在のような、現状と憲法の条文の不一致によって、「日本は憲法を反古にして、
どんどん好き勝手な事をやる国だ」と思われなくてすむはずだ。

多分自衛隊が軍隊だと思っていない国は、地球上のどこにも存在しないだろう。
F−15やイージス艦を持っている集団が、軍隊でなくて一体何だと言うのだろうか。

ジャーナリストの杉山隆男さんによると、航空自衛隊の主力戦闘機・F−15を持っている
国は、日本以外では3カ国しかない。百戦錬磨のイスラエル、オイルマネーで潤う
サウジアラビア、そして自称世界の警察アメリカだ。

つまり少なくともハード面では、自衛隊は世界有数の軍隊と言える。


「第4項:国防軍の監督と運営のため国防省を設置し、国防大臣をもってその長とす。」

→これは前述の通り現状追認だが、しかし「庁」から「省」に格上げするのは
必要な事だろう。何せ自衛隊は、世界有数の軍隊なのだから。またこれも
前述の通り、自衛官の方々の士気を上げるためにも必要だろう。

軍部大臣現役武官制の復活防止については、憲法の他の条文に、国務大臣は
文民でなければならない旨書いてあるので、第9条に書く必要はなかろう
(と言うか、そもそも軍隊がないのに、一体どこに文民でない人がいるのか、
不思議でならぬのだが)。


「第5項:国防軍の最高指揮官は、内閣総理大臣とす。内閣総理大臣が止むを得ない
事情によりその職務を遂行できないときは、法令で定める者がこれを代行す。」

→これも現状追認だが、シビリアン・コントロールは明記すべきだろう。

それとこれは憲法全体の欠陥なのだが、現行の憲法はおろか法律でも、総理大臣が
その職務を遂行できなくなった時、誰がその職務を代行するのかは定められていない。
これはゆゆしき問題である。

というのはもし総理大臣が急死すれば、その瞬間から自衛隊は最高指揮官を失う、
つまりにっちもさっちも動きが取れなくなるからだ。この間に外敵が侵略して来たり、
テロ組織が大量殺人を始めたら、一体どうなる事かと思うと背筋が寒くなる
(総理大臣が急死したり、テロ組織が大量殺人をした事は、実際過去にあった)。

かつてケネディ大統領が暗殺された時、ジョンソン副大統領が即刻大統領に就任したのを、
「ジョンソンが、暗殺を計画したからだ」と言った人がいたが、それは余りにうがちすぎた
見方だろう。核ボタンに、空白は決して許されまい。

ちなみに軍隊には、「軍令承行令」と言うものがある。

例えば戦艦の艦長が大佐で、他に中佐が二人乗っていたとしよう。大佐が戦死すれば、
どちらかの中佐が艦長を代行せねばならない。このときA中佐が「面舵!(右へ曲がれ)」
、B中佐が「取り舵!(左へ曲がれ)」と言えば、この艦は立ち往生する。もちろん
戦闘中に、どちらが艦長を代行するのか、会議や選挙をやって決めている暇はない。

だからこういう場合には、先任順や職種、兵学校の卒業成績等で、同じ階級なら
誰が次の指揮官になるのかが、はっきり決まっているのだ。これを「軍令承行令」と言う。

法律の詳細については、今回の範囲外なのでこれ以上は触れないが、
改善が望まれるところだ。


以上でおしまい。お粗末でした。