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歌う医学博士・Hideが行く
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Vol.81. 憧れのコルコヴァード(ボサノヴァ講座・特別編その10)
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こんにちは。Hideです。
まずは前回のアンケートにご協力下さった方々、どうも有り難う。
次に訂正とお詫び。前回のタイトルで、「ボサノヴァ講座・特別編その8」と
ありましたが、「その9」の間違いです。またやってしまった。どうもすみません。
さて病院の方だが、先日僕がICU(集中治療室。平たく言えば「重症病棟」)で診ていた、
ある呼吸器の病気で(プライヴァシー保護のため、出来るだけ具体的なことは
言わないようにする。悪しからず)、人工呼吸器につないでいた患者さんが、
ついに亡くなった。
正月明けに呼吸が止まって、蘇生術で何とかこの世に戻して、それからというもの、
ほとんどずっと呼吸器にのりっ放しだった(患者さんを呼吸器につなぐ事を、
「のせる」とうちの業界では言う)。ちなみにVol.77. で言った、呼吸器から
離脱させた患者さんがこの方だ(僕のHP
http://www.helio-trope.com/
の、「メールマガジンバックナンバー」を乞うご高覧)。
これだけ長い間、朝外来前に血液ガス(動脈から血液をとって、酸素や二酸化炭素等の量を
測る事だ。呼吸器管理中の患者さんには必須である)等をやって、一日2回も
診に行っていると、やはり情が移ってくる。
最後の何週間かは、だんだん肝臓も弱ってきて、黄疸等も出て来るし、腎臓も弱って、
むくみ等も出て来た。肝臓が弱ると、血小板も減って、出血しやすくなる。
最後の日には、ついに尿もほとんど出なくなり、上半身のむくみがかなり
ひどくなって来た。血小板が健康な人の十分の一以下になったので、
口からも出血して来た。血圧も上が60前後で、ご家族に説明する時の用語で言えば、
「超低空飛行」状態だ。
もともと奥さんが、「もっと早く医者に連れて行ったらよかった」と
後悔されたりとか、「(正月に蘇生)してもらわなければよかった、それならこんなに
苦しむ事もなかった」と、僕に恨みがましいことを言ってみられりとか、
かなり動揺していらっしゃった。
僕は、それをある時は黙って、またある時は相槌を打ちながら、聞いていた。
最後の日、奥さんは僕に泣いて何度も頼んだ。「もう十分です。点滴を止めて下さい。」
と。僕が、「分かりました」と何度言っても。
僕は、ただひたすらそれを聞いていた。
そして僕は、昇圧剤(血圧を上げる薬)2種類(それもかなりの量)を含む、
一切の点滴を止めた。
その結果十数分後に、患者さんはあの世へと旅立って行った。
消極的な安楽死や尊厳死なら、医者は誰でも大なり小なりやっている。
僕もその例にもれない。
僕は、もしこの僕に出来る事なら、患者さんやご家族と、
ともに笑いともに泣ける医者でありたいと思う。
さて、本題と行こう。
2週間あいたので、繰り返しておく。"Corcovado" (「コルコヴァード」。
リオデジャネイロの観光名所で、キリスト像が頂上にある丘のことだ。
http://corcovado.hp.infoseek.co.jp/pages/abt-corco.html
を乞うご高覧)は、実は僕にとってはとても大切な曲だ。
ここからはしばらく、個人的な話をさせてもらうので、ご興味がない方は
どうぞとばして下さい。
'96年から '97年にかけて、僕はピアノの相棒と二人で、京都や大阪で
ライヴをやっていた(詳細や写真は、僕のHP
http://www.helio-trope.com/
の、「Heliotropeとは?」を乞うご高覧。またこの頃の音の一部は、
「試聴室」で試聴可能なので、もしよろしければ)。
僕も相棒も、ボサノヴァが好きだったので、僕がボサノヴァギターを弾いて、
相棒に「イパネマの娘」や「過ぎし日の恋」を歌わせたり、逆に相棒に、
ボサノヴァのリズムでピアノを弾かせて、"Corcovado" や "Dindi" を歌ったりしていた。
実はこの頃、僕は "Corcovado" のコードを、ギターでどう弾けばいいのか
分からなかった。だから長い間、この曲は僕の憧れの曲のままだった。
またこの曲は、僕がポルトガル語(以下「ポル語」)を覚えて歌った最初の曲になった。
あえてそうしたのは、この曲については英語の詞があまり好きではなかったからである。
実はそれ以外の、元来ボサの曲については(「イパネマの娘」や「過ぎし日の恋」など)、
確か ’00年の夏ににブラジル音楽のダイニングバー・「カイピリーニャ」(
http://www.geocities.jp/caipitan/home/top.htm
を乞うご参照)に出入りして、飛び入りライヴに出だすまでは、ポル語から逃げまくって、
英語で歌っていたのである。カイピに出入りするようになって、ついに観念したわけだ。
そういう意味で、カイピにはとても感謝している。そしてカイピの存在を、
ボサノヴァ特集で僕に教えてくれた、雑誌 "SPA!" にも。
話をジョアンに戻そう。そういうわけで、ジョアンが "Corcovado" を歌い出すと、
僕は真っ先に拍手してしまった。
彼のコンサートでは、客はこういうメジャーな曲を(他には「想いあふれて」
(いわゆる「ノー・モア・ブルース」とか)彼が歌う時は、さっと拍手して
さっと止めるのが定番になっている。それは、ライヴアルバムを聴いてもらえれば分かる。
さっと止めるのは、しつこく拍手したら、歌の邪魔になるからだろう。
完璧主義者のジョアンは、それを一番嫌うに違いない。
だからもちろん僕も、拍手は極力短時間にした。
長くなってきたので今回はここまで。次回は遅くとも、17日には出したい。
4日、11日と連チャンでゴルフなので。悪しからず。そして、乞うご期待。
最後まで読んでくれて、本当に有難う。ご意見、ご感想、ご質問等は
hide@helio-trope.com
までどうぞ。「こんな話が聞きたい」というリクエストも大歓迎だ。
(ここで紹介させてもらう事が有るので、それを希望されない方は
乞うご明記)
それとくどいようだが、このメルマのバックナンバーが、僕のHPで読めるので、
http://www.helio-trope.com/
の、「メールマガジンバックナンバー」を乞うご高覧。デワマタ。