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歌う医学博士・Hideが行く
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Vol.68. 3分間治療でなぜ悪い!? (病院小ネタ集・その5)
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こんにちは。Hideです。
今日は実にうっとうしい天気だが、その分涼しいのは有り難い。まあ物事には、
いい面と悪い面があるという事だろう。レコードにA面とB面があるように。
まずは前回のアンケートにご協力下さった方々、どうも有り難う。
chako さんからは、
>私は二年前乳癌の手術をうけ抗がん剤の点滴を受け今はカプセルの
>抗がん剤を飲んでいます。主治医はすごく信頼のおけるドクターです。
>信頼関係がやはり一番だと実感しました。もちろん私も患者としての
>マナーを守っています。これもHideさんのおかげです。
とのメッセージも頂いた。どうも有り難う。
こういうお便りが、僕は一番うれしい。こういう方がいて下さると、「あなたの主治医を
やる気にさせる法」(僕のHP
http://www.helio-trope.com/
の、「メールマガジンバックナンバー」の、「Vol.17. あなたの主治医をやる気に
させる法・初診編(完全版)」を乞うご高覧)とかを書いてきたのも、
まんざらムダではなかったと思えるのだ。
さて前回、ジョアンのコンサートレポをやるかもと言ったが、もう少しネタを
集めてからにしたい。また「「プロフェッション」考」を尻切れトンボにしたままなのに
(覚えてらっしゃるだろうか?、「メールマガジンバックナンバー」の、Vol.63.
「プロフェッション」考(その1)を乞うご高覧)、もう一匹尻切れを増やすのも
なんなので、とりあえず「病院小ネタ集」だけでも、完結させておく。
これで確か4度目だが、、「経営理念」と、「運営理念」を掲げておく(以下引用)。
経営理念
1.救急医療に積極的に取り組み、地域の中核病院になるよう努めます。
2.良い医療サービスを提供し、健康と生活を守るよう努めます。
3.高度な医療で地域に貢献できる病院をめざします。
運営理念
1.効率の良い合理的な病院運営を行い、経営の健全化をめざします。
2.地域の中核病院として他の医療機関との連携を進めます。
(引用終わり)
運営理念の1.までは終わったので、2.を突っ込もう。
→基本的には、経営理念の1.で言った通りだ。つまり風邪引きやはらいたは
開業の先生の所へ行くように、患者さんの啓蒙に努めて欲しいものだ。以前にも言ったが
(詳細は
http://www.helio-trope.com/
の、「メールマガジンバックナンバー」の、「Vol.32. 風邪で総合病院には来ないで
下さい」を乞うご高覧)、そういう患者さんばかりだと、総合病院本来の仕事が
出来なくなる。
経営理念の1.の補足をしておこう。僕も口で偉そうな事を言うばかりでは決してなく、
自分の現場で患者さんの啓蒙は行っている。
具体的に言えば、僕は病院でも、風邪の人には開業医でやる以上の事は特にしない。
それで不満な人は、どこかよその病院に行けばいいと思っている。少なくとも僕の外来には
必要ない。
僕の外来は、ただでさえ忙しくて困っているのだから。これ以上来てもらわなくていい。
特に、僕と合わない人はご免こうむる(クリニックがこのくらい忙しければ最高なのだが。
それなら病院を辞めて、クリニックに専念できるのだが)。
残念な事だがうちの病院には、点滴がためらいなく出来たり(看護婦さんは迷惑だろうが)、
検査がいろいろ出来るのをいい事に、風邪の患者さんに初診時から、
レントゲンやら緊急採血やら、不必要な検査をしたり、抗生剤入りの点滴をしたりする
先生方が多すぎる。もちろん症状が長く続くようなら、他の病気も疑ってそういう検査を
するのは正しい事だとは思うが、いきなり初診時からやる必要はないはずだ。
そういう事をすると、世の中には不必要な検査や点滴が好きな方もいらっしゃるから
(僕にすれば理解しかねるご趣味だが)、そういう方々が集まって、前述の通り
総合病院本来の仕事が出来なくなる。
そればかりでなく、そういう不必要な検査や点滴は、ただでさえひっ迫している医療経済を、
よけい窮地に陥れるだろう。
だから僕は、必要にして最小限の検査(そして薬や注射・点滴)を心がけているのだ。
それが僕の、保険財政の守り手としてのプライドだ(同時に、患者さんの健康と生命の
守り手でもあるわけだが)。
ここに、「3分間治療でなぜ悪い!? 高齢化社会に向ける医療費倍増論(無量一人著、
奥原希行 編、弘文堂)」という本がある。
この本に、まさにここらへんの話が書いてある。長いので要約しておこう(以下「引用」)。
ある地域に、一日100人の咳の患者さんがいたとする。日本では医者が少ないから、
この患者さんたちを一人で診るとする。そうすればまさに、3分間診療にならざるを
得ないだろう。そしてほとんど全員に、風邪の薬を出して、「良くならなければ3日後に
来なさい」と言うしかないだろう。
しかしこの中で風邪の人が90人とすれば、その90人についてはこれでいいのだ。
残り10人が3日後来て、全員にレントゲンをした。うち1人が肺炎だったとしよう。
その人については入院で治療すればいい。後の9人はどうもないので、別の薬を出して
帰した。
さらに3日後、3人が良くならずに来た。そこで全員に痰の検査をしたところ、
1人が肺ガンだと分かった。残り2人はどうもなかったので、また薬を出して帰した。
かくして終了。
こうして少ない時間と労力と費用で、肺炎と肺ガンを1人ずつ見つけた。
さてアメリカではどうだろう。アメリカでは初診時から、患者さん一人に
1時間や2時間かけて、診察や検査や説明を実にご丁寧にやる。
その事自体はいいのだが、それでは一日に100人の咳の患者さんのうち、
6人か7人しか診る事は出来ない。それは時間的にだけでなく、経済的にも
そうならざるを得ないだろう。
という事は、残り93から94人は、薬局で薬を買って我慢するか、
あるいは放っておくしかないという事だ。
これは果たして、いい医療と言えるだろうか?
(「引用」終わり)
これは実に、示唆に富んだ意見だと思う。皆さんも、一度考えてみて欲しい。
よくやり玉に上がる「3分間診療」は、本当に悪い事なのかどうかを。
次回こそは、コンサートレポをやりたい。乞うご期待。
最後まで読んでくれて、本当に有難う。ご意見、ご感想、ご質問等は
hide@helio-trope.com
までどうぞ。「こんな話が聞きたい」というリクエストも大歓迎だ。
(ここで紹介させてもらう事が有るので、それを希望されない方は
乞うご明記)
それとくどいようだが、このメルマのバックナンバーが、僕のHPで読めるので、
http://www.helio-trope.com/
の、「メールマガジンバックナンバー」を乞うご高覧。デワマタ。