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     歌う医学博士・Hideが行く
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  Vol.58. ジャニスに魅せられて
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こんにちは。Hideです。


まずは前回のアンケートにご協力下さった方、どうも有り難う。


10分間外に立つのも、忍耐力が要る季節になってしまった。実に暑い。
何もやる気がなくなりそうだ。このメルマも何とか書いてはいるが、舌鋒は鈍るかも知れぬ。

そう言えば去年の今頃は、健康保険サラリーマン本人3割負担化の事を書いていた
(我ながら、なかなかやる気に満ちあふれた文章だった)。あの悪法が施行されてしまってから、
早いもので3ヶ月以上が経過したが、やはり4割の医療機関で、患者さんが減っている
ようである。きっと政治家や官僚は、次の選挙や自分の任期を、無事に乗り切る事しか
頭にないのだろう。全くやり切れなくなる(このあたりの話は、僕のHP

http://heliotrope.s9.xrea.com/

の、「メールマガジンバックナンバー」のVol.78を乞うご高覧)。


さて6日フェスまで、チェコ国立ブルノ歌劇場の、「アイーダ」を観に行った。
オペラそのものはなかなか良かった。ただ前から2番目の席なのはいいのだが、
前の人の頭が邪魔になるし、右側の端の方だったので、舞台の人の配置上、
メインの人が隠れて見えない事があるのには閉口した。

「アイーダ」はあえて誤解を恐れずに言えば、ヒーロ−とヒロインの心中ものとも言えるが、
やはり日本人の血なのだろう。泣けてしまった。いわゆる大衆演劇にはまる人の気持ちが、
少し分かるような気がした。

でその前に、遅ればせながら初めて、難波のタワーレコードに行った。ここには
ボサノヴァのアルバムがたくさんあると聞いたので、是非とも行ってみたかったのである。

ここで、なかなかの掘り出し物を2枚見つけた。どちらもアストラッド・ジルベルトである
(アストラッドについては、

http://heliotrope.s9.xrea.com/

の、「メールマガジンバックナンバー」の「ボサノヴァ講座・中級編」を乞うご高覧)。

1枚目は、

スタン・ゲッツ&アストラッド・ジルベルト・セッションズ・オン・ヴァ−ヴ
(販売元:ビクターエンターテイメント株式会社)だ。

このアルバムは、スタン・ゲッツの3枚のアルバム「ゲッツ/ジルベルト」、
「ゲッツ・オー・ゴー・ゴー」、そして「ゲッツ/ジルベルト#2」から、アストラッドが
共演したすべてのナンバーを集大成したものとのことである(いずれも ’63年から、 
’64年にかけて録音されたアルバムだ)。

「イパネマの娘」と「コルコヴァード」のシングルヴァージョンも収録されている。
そう、あの「魔法のハサミ」の入ったヴァージョンだ。実は僕も、実際に聴いた事は
なかったのだが、このアルバムで初めて聴く事が出来た。ボサノヴァ史的にも
貴重なアルバムだろう。

ちなみに「イパネマの娘」のつなぎ方はまだいいが、「コルコヴァード」のそれは
余りにもひどいやっつけ仕事だ。やる気があるのかと言いたくなる。まああの時代は、
それで通用したのかも知れぬが。

2枚目は、

ゴールデン・ジャパニーズ・アルバム(販売元:ビクターエンターテイメント株式会社)だ。

これは何と驚くなかれ、アストラッドが全曲日本語で歌った(!!!)アルバムだ。
1969年の録音だが、この頃は外人歌手が、日本語で自分のレパートリーを
カヴァーするのが大流行していたそうである。例えばフランス・ギャルや
コニ−・フランシス、ブラジル勢ではセルジオ・メンデス&ブラジル ’77や
トリオ・エスペランサのエヴァ、ソニア・ローザとそうそうたるメンバーだ。

このアルバムは、前半(つまりアナログのA面)が日本の曲で(書き下ろしと
他人のカヴァーがある)、後半(B面)が外国曲だ(スタンダード・ボサ3曲と
ポップス3曲)。A面2曲目の「愛した愛が好き」とかは、知らない人に聴かせたら、
ただの昔の日本の歌謡曲としか思わないだろう。日本語がたどたどしいのは、
香港人か何かだからだろうと思うかも知れぬ。

ちなみにA面1曲目、4曲目と6曲目は、かのナベサダこと渡辺貞夫さんの
ペンになるものだ。

「イパネマの娘」とかの日本語カヴァーは、カイピリーニャに出入りする弾き語りの
シンガーで、ボサの日本語カヴァーや、日本の歌謡曲のボサカヴァーが好きな人がいるが、
その人を思い出してしまった(ちなみに僕は、その人をブラジル音楽の師匠と仰いでいる)。

アストラッドのHPには、このアルバムの事は載っていないようだ(確かに
ディスコグラフィーにはない)。彼女はこの作品を持っていないという噂もあるようで、
なかなか笑える。


さて本題。前回の続きだ。

もし僕が、美里さんのファン代表に指名されて、「渡辺美里という人はどんな
ヴォーカリストだったのかを、5000年後の人類に教えたいので、MDに1曲だけ入れて、
タイムカプセルに入れたい。その曲を選んでくれ」と言われたら、彼女の数多い
レパートリーの中から、どの曲を選ぶだろうか。

やはり、これしかないだろう。

"Lovin' You" だ。

僕は、美里さんは最高のバラード・シンガーだと思っている。もちろん
「太陽は知っている」とか "Welcome" とか(どうもアルバム「ハダカノココロ」の
ナンバーばかりだが)、速いナンバーもいいのだが、彼女の声の素晴らしさが
一番生きるのは、やはりバラードナンバーだろう。

歌い手は、まず声で聴き手を魅了出来なくてはならぬ。美里さんの声は気高く、力強く、
それでいてとても優しく、繊細だ。きっと彼女はとても純粋で、真剣で、芯が強く、優しく、
かつ細やかな心遣いの出来る人なのだろう。それが声に出ているような気がする。
シルクの滑らかさと、コットンの心地よさを兼ねそろえた声だ。

彼女のバラードの数々を聴いていると、「僕は果たして、この素晴らしい音楽を
聴くのにふさわしい人間なのだろうか?」と、心配になってしまう事さえある。

そのバラードナンバーの山脈の中で、ひときわ高くそびえ立つ最高峰が、
この "Lovin' You" だ。

もちろん「めまい」や "My Revolution 〜第二章〜" 、「素顔」や「十六夜の月
〜izayoino tsuki〜」もとてもいい。しかし美里さんは知る人ぞ知るジャニスフリークで
あり、 "Lovin' You" はこのジャニス・ジョプリンへのデディケートナンバーなのだが、
その尊敬の気持ちが音楽の神様に届いたのか、天の配剤がこのナンバーに
効いているような気がする。

美里さんはこの曲を、2回レコーディングしている。1回目は '86年アルバム "Lovin'you" で、
そして2回目は、'92年アルバム "HELLO LOVERS" で。

しかし、後者の方が断然いい。前者はデビュー後1年くらいしか経っていない頃の
録音なので、まあ止むを得ないところだろう(詳細はVol.57を乞うご参照)。

こんな下らない文章を読んでいないで(!)、レコード店に行こう(レンタル屋さんも可)。
とにかく、 "HELLO LOVERS" を一度聴いてみて欲しい。きっとあなたにとって、
新しい世界が開けるはずだ。



最後まで読んでくれて、本当に有難う。ご意見、ご感想等は

hide@helio-trope.com

までどうぞ。「こんな話が聞きたい」というリクエストも大歓迎だ。
(ここで紹介させてもらう事が有るので、それを希望されない方は
乞うご明記)


それとくどいようだが、このメルマのバックナンバーが、僕のHPで読めるので、

http://heliotrope.s9.xrea.com/

の、「メールマガジンバックナンバー」を乞うご高覧。デワマタ。