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     歌う医学博士・Hideが行く
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  Vol.22. そよ風はジョビンのように (ボサノヴァ入門編その2) 
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こんにちは。Hideです。


まずは言い忘れていたが、11月2日ライヴをする、僕のプロデュースの日系ブラジル人
ボサノヴァシンガー・「ジョアン成原」の自己紹介が、僕のHP

http://heliotrope.s9.xrea.com/

の、「ジョアン成原について」のページで読める。ご興味がお有りの方は乞うご参照。
ボサノヴァの歴史等についても簡単にまとめてある(入門編よりは高度だが)


閑話休題。としさんからこんなメッセージを頂いた。どうも有り難う。

>たしかにボサノヴァのリズムは安らぎますね。

としさん、もし宜しければあなたのボサノヴァ体験等教えて下さい。いろいろボサについて
語り合いましょう。

(ボサノヴァフリークの方がもしいらっしゃれば、宜しければ僕の掲示板で(HPから
行けます)、ボサノヴァファンのヴァーチャルミーティングをしませんか?)

では本題。こういうお便りを頂けたという事は、やはり僕は間違っていなかったようだ。
前回紹介した、

イパネマの娘/ナラ・レオン(日本フォノグラム株式会社)

を聴いて頂けただろうか。お一人くらいは聴いて下さったかも知れない。

小さなレコード店では、多分取り寄せになるだろう。と言うか、かなり大きな所(いわゆる
量販店)でないと置いていないかも知れない。取り寄せて下さって、まだお手元に無い方も
何人かはいらっしゃるだろうか。

断っておくが、僕は日本フォノグラム株式会社にもナラ・レオンにも、何の義理も無い。

ただこのボサノヴァと言う素晴らしい音楽を知る方が、この世の中に一人でも増えて
欲しいと思うだけだ。そうすればボサノヴァの素晴らしいレコードの数々が、日本でもっと
手に入りやすくなり、またボサノヴァの素晴らしいアーティストたちも、どんどん日本に
来てくれるからだ。またボサノヴァがやれるライヴハウスやライヴバーが、どんどん
増えてくれるからだ(まあこのへんは遠い夢だが)。

山川健一さんという、作家でバイク評論家で、かつロック・ミュージシャンというなかなか
凄い人がいる。ストーンズ・フリークでもあり、ストーンズのアルバムに短編小説を
書いていたりしたので、ストーンズのファンの方はご存知かも知れない。

この人は、「ブルースの伝道師」と自称している。

山川さんの言葉を借りれば、僕は「ボサノヴァの伝道師」なのかも知れない。

話を「イパネマの娘/ナラ・レオン」に戻そう。このアルバムは、僕が前回挙げた
ボサノヴァの名曲が全て入った、実にお買い得なアルバムだ。最高のボサノヴァ名曲集と
言っていいだろう。もう一度曲名を挙げておこう。

「イパネマの娘」、「ノーモア・ブルース(想いあふれて)」、「ワンノートサンバ」、
「コルコヴァード」、「ウエイブ」、「フェリシダージ」、「黒いオルフェ
(カーニヴァルの朝)」、「メディテーション」、「デサフィナード」、
「ジェット機のサンバ」...。

さてこれらの名曲のほとんど全て(「黒いオルフェ」以外)を、作曲した人をこれから
紹介しよう。この人の曲は、世界中でビートルズよりたくさんレコードを売っているので、
彼は文句無しに、ポピュラー音楽史上最高の作曲家の一人と言っていいだろう。
その名はこうだ。

アントニオ・カルロス・ジョビン。

この人は、ブラジルでは国民的英雄だ。何しろ空港に、この人の名前がついているくらい
だから。普通空港には、ドゴールとかJ.F.ケネディとか、その国の歴史に残る政治家の
名前がついているものだが、なかなかブラジル人は粋なことをする。

個人的な話をすれば、僕はF1のセナの死より、ジョビンの死の方がよほどショックだった
(セナのファンの方、ごめんなさい)。まあセナも国民的英雄で、ブラジルは国を挙げて
3日間服喪したそうだが。

以前ジョビンが来日したとき、「何で行っとかなかったんや!」と、激しく後悔して
しまった。まあその頃は、素晴らしさが分かっていなかったというのもあるが。

「イパネマの娘」は、ボサノヴァ史上のみならず、ポピュラー音楽全体の史上に残る
大名曲だ。この曲は '63年に、ジョビン自身らの歌と演奏で世界中で大ヒットし、
ボサノヴァは世界へと広がって行った。

このあたりのボサノヴァの歴史については、初心者の方にはこの本をお勧めする。

ボサ・ノヴァが流れる午後 大島守著 中央アート出版社

この本を読めば、ボサノヴァ史の概略はつかめるだろう。ユーミンさんや小野リサさんから
始まって、実に分かりやすく書いてある。装丁もおしゃれなので、女の人には特にお勧めだ。

まあジョビンがいなくてもボサノヴァは有ったかも知れないが、彼がいなければ
ボサノヴァは、ここまでメジャーになる事は無かっただろう。と僕の意見を述べて、
とりあえずジョビンの話は終わる。

どうも話がそれる。再び話を、「イパネマの娘/ナラ・レオン」に戻そう。この
アルバムは、「小舟」(原題は " O Barquinho " )という曲から始まる。

この曲は、珍しくロベルト・メネスカルと言う人のペンになるものだ。まあこの曲も、
ボサノヴァの名曲の一つと言っていいだろう。

ロベルト・メネスカルという人は、ナラ・レオンの生前にはともに活動していた
ギタリストだ。「イパネマの娘」は、彼と3人の日本人ミュージシャンが
バックを勤めている。ロベルトは今では、ワンダ・サーというシンガーと一緒にやっている。

このワンダ・サーの、下記のアルバムもお勧めだ。

私と音楽 ワンダ・サー&メネスカル ポリグラム株式会社

お勧めポイントは、ガットギターにこだわらず、エレキギター(と言ってもうるさくない
音の)をソロ等で多用したりとか、「イパネマの娘」より現代的な感覚のアレンジで、
ボサノヴァの初心者の方の耳に入りやすそうな所だろう。もちろん名曲もいろいろ
入っている(「イパネマの娘」ほどではないが)。

そう言えば、僕の知人の自称「本物のジャズファン」が、こんな事を言っていた。

「マリーンの歌うジャズなんかジャズじゃない」と(マリーンさんのファンの方、僕が
言ったんじゃないんで許して下さいね)。

しかし僕には、どうもその違いが分からない。多分僕のような、多少ジャズを聴きかじる
程度の人間には、サラ・ヴォーンとかエラ・フィッツジェラルドとかのいわゆる「本物の」
ジャズよりも、ある程度モダンな感覚にアレンジされたジャズの方が、耳に入りやすいと
いう事だろう。

そういうわけで、初心者の方にはむしろ「私と音楽」のほうがよかったかも知れぬ。
ゴメンナサイ。

ちなみにこのアルバムの発売元は、"Zico Label" (ジーコ・レーベル)という所だ。
そう、あのサッカーのジーコがはじめた会社である。「いい音楽を発掘するため」と
いうことで始めたようだ。ジーコという人、ただのサッカーバカではない、なかなか
偉い人である。代表監督もどうか頑張って下さい。

声的には、ボサノヴァとしてはオーソドックスではない、比較的ねっとりした歌い方だ。
ナラ・レオンがざるそばなら、ワンダ・サーはスパゲッティという所だろうか。まあ好みが
分かれるかも知れぬ(僕はどちらも好きだが)。

今回はこのくらいにしておく。次回から初級編としよう。


最後まで読んでくれて、本当に有難う。ご意見、ご感想等は

hide@helio-trope.com

までどうぞ。「こんな話が聞きたい」というリクエストも大歓迎だ。
(ここで紹介させてもらう事が有るので、それを希望されない方は
乞うご明記)


それとこのメルマのバックナンバーが、僕のHPで読めるので、

http://heliotrope.s9.xrea.com/

の、「メールマガジンバックナンバー」を乞うご高覧。デワマタ。