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     歌う医学博士・Hideが行く
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  Vol.84. 日本の医療に未来あれ! (その2)
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こんにちは。Hideです。


まずは前回のアンケートにご協力下さった方々、どうも有り難う。

captainUME さんからは、久しぶりに、

> Dr.Hideさんが引用されているDr.鈴木の仰っている事は誠に痛快且つ正論と思います.

とのメッセージも頂いた。どうも有り難う。船旅から帰って来られたんですね? 
またお土産話など、お聞かせ下さい(新しい読者の方のために説明しておくと、
このメルマは普段タメ口でやってはいるが、敬語が混じる事もある)。


さて、二つ訂正しておく。

一つは、前回「あと3回」連続でメルマを出すと言ったが、ゴルフが9日と23日に
あるのを忘れていた。そういうわけで、8日と22日は休刊させてもらうので、
悪しからず。

もう一つは、ボサノヴァ講座・特別編を「一回休み」と言ったが、現シリーズが今回も
続くため、「二回休み」に訂正する。

以上すみませんでした。


話は二転するが、次の病院を(とは言っても、週2日非常勤だが)、前回言った所に決めた。

そういうわけで、昨日今の病院に、辞表を出してきた。事務長には、「親父が病気なので
(これは本当だ)、非常勤で残ろうかと思ったがそれも無理だ」と、「ウソも方便」した。
事務長は、「もう少し先にならないか?」とは言ったが(これははっきり断わった)、
辞める事自体については「仕方ないな」と、あっさりあきらめた。まあこれでいいのだろう。

また、病院チェーン "T" の総本山にも(分かる人には、これでどこか分かるかも
知れぬ)、断りの電話を入れた。「またの機会がもしあれば、宜しくお願いします」とは、
言っておいたが。

まああの病院は、これから毎年ドックの被検者としては行くつもりだし、
それで許して頂こう。


さて、本題と行こう。今回でけりをつけたい。

前回、鈴木厚先生の本「日本の医療に未来はあるか──間違いだらけの医療制度改革」
(ちくま新書)について、この本の要旨は一言で言うと、

「日本の医療界の諸悪の根源は、国家(ネアリーイコール政治家)が、医療にお金を
かけていない事である」

という事であること(「諸悪」とは、医療事故、医者の説明不足、いわゆる
「3時間待ちの3分間診療」等である)、「お金をかけていない」証拠として、
鈴木先生は、国民医療費は年間30兆円で、これは一見すごいようだが、
驚くなかれ公共事業費のわずか約3分の1であること、また30兆円は、パチンコ産業の
上がりと同程度で、国民年金(40兆円)より安く、葬式産業でさえ15兆円であること、
おまけに政府は、銀行救済には70兆円使っていること等を挙げていらっしゃることを
書いた。

その結果として、国民一人あたりの医療費は、世界第7位だ(アメリカは第2位)。

えっ?「世界第7位なら、ベストテン圏内だしいいだろう」って?

国の経済力を考えてみよう。経済力の指標もいろいろあるが、GDPは一つの目安だろう。

対GDP比にすると、世界第19位に落ちてしまう(アメリカは1位だ)。

かつ日本は、国民皆保険でかつ医療機関にフリーアクセスなので、医療機関の敷居が低く、
その結果外来、入院ともに、欧米の4倍の患者さんがいる。

そういうわけで、患者さん一人あたりの医療費は、日本は世界でも最下位だ。

その一方で日本の医療水準は、WHOが認める通り世界一だ(アメリカは37位)。
これは平均寿命、乳幼児死亡率、周産期死亡率等が示している。

ちなみにアメリカでは、貧困のため4500万人が保険に入れず、かつ民間保険が医療を
コントロールしていること( "ER" とか、そういうアメリカの医療ドラマを、
ご覧になったことがあるだろうか? まさにその通りだ。こんなことだから、
37位なのだろう)、またイギリスでは指定された家庭医にかからないと保険がきかず、
専門医にかかるのは数ヶ月待ちが当たり前なので、癌が手遅れになったりするのが
社会問題化していることは、忘れるべきではないだろう。

この日本の医療の、世界一のコストパフォーマンスを誰が支えているのかと言うと、
それは医療関係者の皆様の(とは言っても、僕もそのハシクレだが)尊い献身であるのは、
疑いないところだろう。

「3時間待ちの3分間診療」とか、世間では無責任に批判しているが、前述の通り
日本の医療機関の外来には、アメリカの4倍の患者さんが来る(ちなみに人口当たりの
入院ベッド数も、アメリカの3倍以上だ)。しかも人口あたりの医師数は、
日本はアメリカの3分の2だから、日本の医者は、アメリカの6倍の外来患者さん
(本には「8倍」とあるが、「6倍」の間違いだろう)、5倍の入院患者さんを
診ていることになる。

これで、「3時間待ちの3分間診療」にならない方がおかしいだろう。

またアメリカ直輸入の「インフォームド・コンセント」など、一体どうやって
実行すればいいのか、厚生省のおエラい方々に教えて欲しいものだ。医者の数を
5倍や6倍に増やしてから、言ってくれと言いたくなる。

医療事故だって、もっと医者が増えて、徹夜の当直明けに外来や手術をするような、
非常識な医者の勤務体制がなくなれば(まあそれを当たり前だと思わされている、
政府にとってはこの上なく有り難い、愚民医者もいるのだが)、そしてもっと
看護婦さんが増えて、仕事にダブルチェックやトリプルチェックをする余裕が出来れば、
もっと減らせるのだ。

医療の現場がこんな状況なのに、この上医療費を削ろうとする、どこかの内閣のやる事など
狂気の沙汰だろう。

次の参院選では、そのあたりの事も頭に置いた方がいいのかも知れない。



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