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     歌う医学博士・Hideが行く
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  Vol.37. 効く薬の無い医者
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こんにちは。Hideです。


まずは前回のアンケートにご協力下さった方、どうも有り難う。


病院の方はおかげさんで、昨日は久々に定刻に帰れた。しかも漫画を読む暇も有った。

僕は雑誌は "SPA" と "SAPIO" 、漫画雑誌は「モーニング」と「ビッグコミック」と、
「ビッグコミックオリジナル」を読んている。だから仕事が忙しい時は、雑誌がたまって
しまって大変なのだ。週末電車で難波周辺に出た時や、今日のようなバイトの当直先とかで
消化している。

やっと、正常な病院での毎日が戻ってきた。


ところが病院でもクリニックでも、非常に困った事が一つある。

それはインフルエンザB型ウイルス(俗に言う「ビールス」)の特効薬「タミフル」が、
全国的に品切れだという事だ。

インフルエンザのウイルスには、A型とB型が有る。そしてB型に効く薬は、この
タミフルしか無い(A型にだけ効く薬なら、「シンメトレル」というのも有るが)。
そしてここのところ、B型が増えてきている。

全く、効く薬(と切れるメス)の無い医者ほど、惨めなものは無い。それが身にしみて
分かった。

何しろインフルエンザは、小児の方では脳症や脳炎、老人の方では肺炎や心不全等を
併発し、命にかかわりかねない病気なのだから(実際今日の新聞でも、すでに脳症で
今シーズン30人のお子さんが、命を落とされたそうだ)。幸い僕の患者さんには
まだないようだが。

しかし厚生労働省(長ったらしいので、以下単に「厚生省」)は、一体何を
やっているのだろうか。税金泥棒もいい所だ。

今年はインフルエンザが大流行するというのは、すでに予想されていた事ではないか。
しかもタミフルを作っている会社は1社しかない。完全な独占状態だ。

ならば国がタミフルの生産を奨励し、もし余れば国が買い上げるくらいの事が
どうして出来ないのか。

あるいはそれがもったいなくて出来ないと言うのであれば、インフルエンザの
迅速診断キットで、しかもA型とB型の区別が出来るやつの生産や購入を、
国が奨励しても良かったではないか。そうすればタミフルはシンメトレルより
高い薬だから、タミフルの濫用に歯止めをかけられて、医療費節減にもなったはずだ
(これは僕が以前から、医師会等でも主張してきた事だ)。

以前にも言ったが、国家は何のために有るのかと言えば、それは、

『国民の生命や健康、財産を守るため』だろう(異議のある人は教えて欲しい)。

とすればそれが出来ない国家に、果たして存在意義は有るのかという話に
なって来るだろう。そういうレベルの、非常に次元の低い所の話だ。

全く厚生省の医官というのは、何をやっているのだろうか。全然臨床を知らないのだろうか。

あるいは彼らはちゃんとしているのかも知れないが、彼らの意見を聞いて政策を立案する
もっと上の人間が、彼らの言う事に聞く耳を持たない独善家どもなのだろうか。

そう言えば、1月29日の大阪府医師会の新聞の社説に、なかなかごもっともな事が
載っていた(これは皮肉ではない)。引用してみよう(註:テーマは医療への
株式会社参入や、保険診療と保険外診療の混合への反対である)。

(前略)「医療」や「患者」の本質を全く認識出来ていない者と、基本認識が異なるままで
いくら議論してみても話が噛み合うわけもなく、互いに相手を説得出来るはずもない。
本来ならばこの際分かっていない者が潔く引き下がるべきであるが、今の世は
なぜか分かっていない者の方が分かっている者を平然と抑え込もうとする風潮が
至る所に蔓延している。(後略)

これは全くその通りだと僕も思う。これは僕が以前在籍した、某政党系の病院についても
言える事だが(とにかく社会主義者や共産主義者というのは、インテリが嫌いであるのは、
古今東西を問わぬ。「毛沢東の私生活(上・下巻)」(李ちすい著、文集文庫)を読んで、
あの病院とそっくりだと思った)、決してそういう左翼どもに限った話ではない。

何しろ現在は、人によってレベルの差はかなりあるものの、総じて医学には
半素人さんである看護婦さんや、素人さんである患者さんが何か言えば、
バイトの医者の首などは簡単に飛ぶ時代なのだから。

そう言えば、「医者が看護婦さんに合わせる時代だ」などと言い放った医者が前いたが、
仮にそれが本当だとして、医学について知識の有る方が無い方に合わせるというのが
(つまり無い方のレベルで判断が行われるのが)、いいことか悪い事かくらいは、
まともな頭が有ればすぐに分かるだろう。せめて嘆かわしそうに言って欲しいものだ。

話を元に戻すとそういうわけで、厚生省の上の人間が、医官の言う事に聞く耳を持たない
独善家どもだというのは、大いに有り得る話だ。


政府の無能ぶりを嘆くのは、このくらいにしておこう。余りにも腹が立ってきたから
(ちなみに僕を厚生大臣にして下さる方も、余り期待はしていないがしつこく募集中だ)。

しかし効く薬がないというのは、日本では非日常だが、発展途上国、特にイラクや
北朝鮮ではこれが日常であるのは、忘れてはならないだろう。

ここからは軍事評論家の兵頭二十八さんの受け売りだが(ちなみにご本人は、「軍学者」と
自称されている)、独裁国家に経済制裁は余り効果がないのだ。

というのは、独裁者にとってはそんな一般の民草がいくら死んでも、痛くも痒くも
ないからだ。江戸時代のどんな大飢饉の時でも、将軍や大名が飢え死にしたという話は
聞いたことが無いだろう。それと同じである。

少し話はそれるが、兵頭さんは前の戦争の時、アメリカも日本も、「相手にとって
何が一番痛いか」を読み違えたと言う。つまりどちらも、「自分にとって痛い事は
相手にとっても痛いだろう」と一人読み筋をやったと言うのだ。

もっと具体的に言おうと思ったところで、時間になってしまった。ゴメンナサイ。
ボサノヴァもまたまたお休みで、重ねてゴメンナサイ。続きは次回。



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