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     歌う医学博士・Hideが行く
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  Vol.24. わが心のジュアゼイロ (ボサノヴァ講座初級編・その1)
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こんにちは。Hideです。

まずは前回のアンケートに投票して下さった方、どうも有り難う。励みになります。

それからN.N.さんからは、

> 元々JAZZ好きな私。
>
> モチロン、ボサノヴァも好き。
> 小野リサさんのCDも持っています。

とメールを頂いた。

> Hide さんが音楽をやっていらっしゃる医師
> であることは、文面から知っていたのですが、
> どんなジャンルの音楽活動を展開しているのか
> 全然知らない所へ(正直、あまり興味がなかったんです;失礼;)
> ボサノヴァの話が出てきたので、嬉しくて
> 思わずメールを送信してしまいまいした♪

と言うことで、こういう方もいらっしゃったのかと思わずうれしくなってしまった。どうも
有り難う。

というわけで本題。約束通り今回から、ボサノヴァ講座・初級編だ。

初級編は、やはりこの人の話から始めないわけには行かないだろう。ボサノヴァを知る人
なら、「ボサの話なのに、何であの人の名前が出ないんだ?」と思っていらっしゃったかも
知れない。

実は初心者の方にはとっつきにくかろうと思って、あえて入門編では名前を出さずに
いたのだ。その人の名はこうだ。

ジョアン・ジルベルト。

この人がどれだけ凄いかは、この人の異名が「ボサノヴァの法王」である事を話せば
分かってもらえるだろうか。法王とは言うまでもなく、世界中のカトリック信者の頂点に
立つ人である。その宗教的な権勢はもちろん、世俗的なそれも大変なものだ。

「そんなもんクリスチャンでもあるまいし分かるか!」とおっしゃるあなた。

あなたはロックが分かるだろうか。ジョアン・ジルベルト(以下単に「ジョアン」)と言う
人は、ロック界で言えばジョン・レノンと、ミック・ジャガーとポール・マッカートニー
と、ついでにエリック・クラプトンとリッチー・ブラックモアと、ジミー・ペイジと
キース・リチャーズを合わせたくらいの存在である。

リッチー・ブラックモアが嫌いなロックファンはたくさんいるだろう。「ジョンは好きだが
ポールは嫌いだ」という人も結構いるだろう。しかしこの7人が全員嫌いだと言うロック
ファンに、僕は会ったことがない。

それと同じで、ジョアンという人はボサノヴァ界のカリスマなのだ。ジョアンが嫌いだと
言うボサファンやボサミュージシャンを僕は知らない。

ボサノヴァの原点がガットギター(クラシックギターと言った方が通りがいいだろうか)の
弾き語りであることは、忘れてはならないだろう。そしてそのギターのリズムパターンは、
この音楽に特徴的なものだ(これについて詳しく知りたい方は、

http://member.nifty.ne.jp/BossaNova/

の、「ボサノヴァを弾き語ろう!」をご参照下さい。ボサの弾き語りを始めてみたい方にも
お勧めだ。)

このリズムパターンを発明したのが誰かという事には諸説があるが、少なくともその
完成者がジョアンで、その時期は1956年前後であった事は、衆目の一致するところ
だろう。

つまりジョアンがいなければ、ボサはなかった事になる。いや有ったかも知れないが、
少なくとも現在の形ではなかっただろう。よしんば現在の形であったとしても、もっと
出現は遅れていただろう。

前々回言った通り、1963年にジョビンはアメリカで、「イパネマの娘」を
レコーディングし、これは世界中で大ヒットした。このとき前半のヴォーカルと、ギターを
担当したのがジョアンだ(ちなみに後半のヴォーカルは、当時の彼の夫人であった
ボサノヴァシンガー、アストラッド・ジルベルトによるものだ)。

そしてプロデューサーは、マスターテープに魔法のハサミをふるった。つまり前半の
ヴォーカル(ポルトガル語)をカットし、ヴォーカルは後半(英語)のみにしたのだ。

おそらくこの魔法のハサミがなければ、「イパネマの娘」の大ヒットは無かっただろう。
そしてボサノヴァが、世界にその名を知られる事も無かっただろう。

しかしその反面、この魔法のハサミが、ボサノヴァの本質が広く誤解される元を作ったのも
また事実だ。多くの人は、ボサノヴァを未だに、「60年代ジャズの一変種」や、
「おしゃれな夏のBGM」と思っているだろう。その原因の大半もまた、この大ヒットから
始まったのだ。

言い方を変えれば、ジョアンの凄さというのは、ボサを聴き込まないと分からない。
逆に言えば、聴き込めば聴き込むほど分かってくる。今まで紹介しなかったのも、
それが理由だ。

とりあえず、このアルバムを聴いて欲しい。

The Legendary Joao Gilberto

(邦題は「ジョアン・ジルベルトの伝説」オデオン/EMI(東芝)だが、'98年現在日本では
廃盤になっているそうだ(ジョアンがブラジルEMIともめたらしい)。再発されているかも
知れないが、もし無ければ輸入盤の店で注文して下さい。ちなみに僕は輸入盤を買った)

これはなんと38曲入っている。もちろんボサの名曲もたくさん入っている。
はっきり言ってお買い得なアルバムだ。

ちなみに今回のタイトルの「ジュアゼイロ」というのは、ブラジル東部のバイーア州の
都市で、ジョアンの出身地だ。

僕のようなボサノヴァオタクの必須アイテムに、こんな本がある。

ボサノヴァの歴史 ルイ・カストロ著 JICC出版局

この本の主役は、当然の事ながらジョアンだ。彼に始まり彼に終わっている。
そして話は、このジュアゼイロから始まる。

とりとめが無いが、今回はこのくらいにしておこう。


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