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     歌う医学博士・Hideが行く
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  Vol.102. リン・ミンメイから李香蘭へ
         〜時空を越えた歌姫伝説〜 (その2)
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こんにちは。Hideです。


まずは前回のアンケートにご協力下さった方々、どうも有り難う。


やっと風邪が治ったと思ったら、花粉症でまさに、一難去ってまた一難だ。
最初は目のかゆみから来たが、今日は鼻にも来た。仕事中にくしゃみが出て、
全くしまらない。


さてよくない事は続くもので、ついに病院を、今月末でクビになってしまった。

ドイツのことわざに、こんなのがある。

「馬鹿と子供は、真実を言う」

もしこのことわざが本当なら、僕は馬鹿過ぎたのかも知れない。

実は先月末に、その旨宣告されていたのだが、このメルマはいろいろな人が
読んでいるので、あえて今日まで書かなかった。

今日書いたのは、昨日次の病院が決まったからだ。大阪の某衛星都市の、有名総合病院だ。
今度こそはクビにならないように、せいぜいもう少し利口になる事にしよう。
就職活動には、実に時間とエネルギーがいる事が分かったし。もううんざりだ。

「バイトは生活のため、やりたい医療は自分の施設で」と、これからは割り切るように
しよう。

しかしクビそのものは、一非常勤医として一応謙虚に受け止めるが、僕が引っかかるのは
今の病院では、医者を採用するのにもクビにするのにも、両方医者が誰一人として
出て来なかった事だ。こんな病院は初めてだ。

それだけでなく、クビの事を次の日だったかに、直属の上司(僕の属する、循環器内科の
ボス)に報告すると、どうやら知らなかったようだ。

これはつまり、医者(院長くらいは例外だろうし、またそう信じたいが)の知らない所で、
医者の人事が決められているという事だ。

医者が医者を評価するという、当たり前のシステムにしなければ、医者はやる気を
なくすだろう。

そう言えば前の病院でも、事務員さんが医者を評価していた。

具体的に言えば、僕の仕事量をカルテも何も見ずに(まあ事務員さんが見ても
分からないだろうが)、単に患者さんの数だけで評価していたのだ。

僕のきっちり書いたカルテと、あとから見ても何の事か分からない他の先生方のカルテと、
一緒にされてはかなわない。

医者の評価は、医者がすべきだ(こんな当たり前の事を、今さら言わねばならぬのが、
とても辛い)。


不愉快な話は、今回はこのくらいにしておこう。それでは本題。

前回の話をまとめておくと、飯島真理さんと言えば、僕と同世代の方なら思い出すのが、
「超時空要塞マクロス」(以下単に「マクロス」)という劇場用アニメだろうという事、
歌が兵器、それも最終兵器になるというアイデアは、僕が知る限りマクロスに独特のもので
ある事、そしてそれを思うたび、僕は李香蘭の事を、想い出さずにはいられない事
(これは僕が知る限り、まだ誰も言っていない事だ!)だった(ちょっとまとめ過ぎか)。

ここでは皆さんが、李香蘭のことを全く知らないと仮定して、話を進める。

そもそも僕が李香蘭に興味を持ったのは、かなり前に沢口靖子さんが彼女を演じた
テレビドラマを観てからだ。

李香蘭とは一口で言えば、前の戦争の時満州にあった、日本の国策映画会社・
満州映画協会(以下「満映」)の看板スターだ。

中国人のような名前だが、実は彼女は日本人で、本名を山口淑子と言う。

彼女の父親は、満鉄(南満州鉄道株式会社)の職員だったので、彼女は満州で生まれた。

当時の中国では、家族同士が親戚のように親しくなると、義理の血縁関係を結ぶ
風習があった(今もそうかも知れぬが)。そのため父は、親友であった軍閥の領袖・
李際春将軍と、形式上ではあるが養子縁組を取り交わすことになった。
李香蘭という名前は、このとき彼女についたものである。

病弱だった体を鍛えるために、彼女はロシア人のオペラ歌手から声楽を習ったが、
これをきっかけに奉天放送局から歌手、さらに満映からスカウトされた。
李香蘭という名前を芸名に使う事も、このとき決まった。

では何故、日本人である彼女は、あえて中国人風の芸名で「歌う中国人女優」、
「姑娘(クーニャン)スター」としてデビューせねばならなかったのだろうか?

満映が設立された目的は、日本人の満州人、さらには中国人への「宣撫工作」、
つまりは彼らに日本や日本人を好きにさせる、それが無理なら少なくとも嫌いでなく
させるためである。

そのために彼らは、日本の象徴である優しく強いヒーロー(もちろん日本人)が、
満州や中国の象徴である、ヒーローに反抗的なヒロインを、その優しさや誠実さでもって、
だんだん自分に好意的にさせていくというストーリーの映画を作った。李香蘭はもちろん、
このヒロイン用の人材だ。

有名な「蘇州夜曲」や「夜来香(イエライシャン)」といった曲は、いずれも李香蘭の
ヒット曲である。これらは映画でも使われた。

ただリン・ミンメイと彼女の最大の違いは、前者の歌は最終兵器として敵を壊滅させたのに
対し、後者は余り効果的ではなかった事だろう。


長くなって来たので、このあたりで続きは次回。

来月からは、土曜日がゴルフのお稽古の日になりそうなので、他の曜日にメルマを
出そうかとも思っている(但しライヴ前は、休刊を余儀なくされそうだが...)。
乞うご期待。



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