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     歌う医学博士・Hideが行く
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  Vol.33. 永遠の「イパネマの娘」(ボサノヴァ講座中級編・その2)
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こんにちは。Hideです。


まずは前回のアンケートにご協力下さった方々、どうも有り難う。

どうやら医療ネタのほうが、ウケがいいようである。あるいは前回言った事は、
僕の悲鳴に近い叫びだったので、それが「よかった」と言って下さった皆さんの心に
届いたのかも知れない。

とりあえず医療ネタを多い目にやって行った方がいいのかも知れぬ。異論がお有りの方
(「俺は音楽ネタが読みたいんじゃー!」とか)は、

hide@helio-trope.com

までどうぞ(ここで紹介させてもらう事が有るので、それを希望されない方は
乞うご明記)。それがおいやなら、アンケートにはコメントを付ける事が出来るので、
どうぞお寄せ下さい。

そう言えば今はどうなのか知らないが、昔帝京高校のサッカー部と野球部は
同じグラウンドで練習していて、どちらかが全国大会で優勝すると、境界線が
相手の方に何メートルか移動したそうだ。

このメルマも帝京高校方式にするべきなのかも知れぬ。

もちろん医療と音楽と社会問題の3つのメルマを、同時に発行出来れば
最高なのかも知れぬが、そんな時間と労力はとても割けない。悪しからず。

まあここまで残って下さった読者の皆さんは多分、医療人や音楽人それぞれでなく、
トータルな存在としての僕を支持して下さる方々なのだと思うので、
このままやらせて頂こう。


と言うわけで、まずは前回の補足。

前回厚生労働省が、200床以上の病院の外来患者さんを減らそうとして、
その診療点数を下げた事を批判した。批判するだけで対案を出さないのは無責任なので、
ここで開陳しておく。

それは、「200床以上の病院の外来は、紹介状(もちろん医者の)が無いと
受診出来ないようにする」事だ。

もしそれが、患者さんから選択権を奪うのでまずいと言うのであれば、「200床以上の
病院の外来は、紹介状(もちろん医者の)が無い場合、診療点数を大幅に上げる」ように
する事だ。これは事実、現在でも大学病院等ではやっている所は有るはずである。
それをもっと広げるのだ。うちの病院にも広げて欲しい。

ただ僕ら現場の人間が何を言っても、なかなか世の中は変わらないのだ。

僕が学生の頃、小児科の先生が病院実習で、こんな事を言った。

「君らにノーベル賞を取って欲しい。」と。

理由を訊かれてその先生は言った。「教授が診察しても僕がしても、来年医者に
なったばっかしの君らがしても、同じ初診料なのはおかしいと思わんか?」と。

そこで僕は訊いた。「それはごもっともですが、それとノーベル賞とは
どう関係あるんですか?」と。

「そこや。」先生は言った。「で、君らがノーベル賞を取ると、天皇陛下の園遊会に
招待されるわけです。そこで、一言言って欲しいんですな。

『いやー、今の保険の制度は間違ってますな』と。

すると突如として、改革が始まるんです。日本というのはそういう国です。」と。

この話を、僕が学位論文の研究のためにいた、ある基礎医学の教室の教授にすると、
「そんなもんではとてもじゃないが、改革は始まらん。政治力を持たねばならん。」
との事であった。

というわけで、どなたか僕を厚生大臣にしてもらえないだろうか。そうすれば
前述の対案を実現するだけでなく、ボッタクリ診療をする面汚しの悪徳病院を、
片っ端からつぶしてやるのだが。そうすれば少しは、日本の医療や医療経済も、
改善すると思うのだが(まあこれは半分冗談だが。自分のクリニックはあるし、
そこにこんな僕でも頼って下さる患者さんはいらっしゃるし)。


次にくどいようだが、前回

1.常識的に風邪と思われる症状なら、間違っても総合病院には来ないで下さい
  (開業医(休日ならあなたの町の休日診療所)に行って下さい)

2.常識的に風邪と思われる症状なら、たとえ総合病院にかかりつけの患者さんでも、
  次の時間内診療まで待って下さい

という事を書いた。

言うまでも無いだろうが、僕はこれを書いたからと言って、僕の病院を風邪で訪れる人や、
軽症で時間外に来る人が、すぐにいなくなってくれるとは思っていない。

たぶん読者の皆さんの中で、僕の病院の患者さんは一人いるかいないかだろう。
それは分かっている。

ただ僕が前回書いた事を皆さんが読んで下さり、そのうちの何人かの方だけでも
その通りにして下されば、日本のどこかの病院で、医者がもっと早く重症の患者さんの
所に行けて、その結果何人かの患者さんの命が助かるかも知れない。もしそうなって
くれたなら、それだけで僕は大満足なのだ。

ただ皆さんが、このメルマや僕のHPの存在を他の方に知らせて下されば、ひょっとしたら
もっと多くの患者さんが助かるかも知れない。そしていつかは、僕の病院を風邪で
訪れる人がいなくなってくれる(あるいは、少なくとも減ってくれる)かも知れない。
そうなれば、僕はもっと嬉しいのだ。

いきなり話が大きくなるが、かのジョン・レノンだって、「イマジン」という歌を
歌ったからと言って、それでいきなり戦争がこの世の中から無くなるとは、
まさか思ってはいなかっただろう。

僕は医療界のジョン・レノンになりたい。


それでは本題。一部の皆様はお待ちかねの(外交辞令かも知れぬが)、ボサノヴァ講座だ。
今回でアストラッド・ジルベルトにはけりをつけたい。

まず初期の彼女──ボサノヴァだった頃──を知りたいあなたには、

イパネマの娘/ベスト・オヴ・アストラッド・ジルベルト(ポリドール株式会社)

をお勧めしたい。前々回の2曲もしっかり入っているが、やはり一押しは、
「トリステーザ」だろう。これほどノリのいいボサ・サンバ・ナンバーはなかなか無い。
個人的な話をすれば、僕も弾き語りで挑戦した事があったが、英語の詩が聴き取れず
挫折した事がある(アルバムは英語なのに歌詞カードはポルトガル語!)。

「過ぎし日の恋」、「瞑想」「ディンディ」、「ビーチ・サンバ」、「お馬鹿さん」
などの名曲もとてもいい(そう言えば尾崎亜美さんのデビュー曲も「瞑想」という
タイトルだが(曲は全然違う)、この辺から来ているのだろうか)。

前々回アストラッドの声を、「可愛らしい」と言ったが、もちろん日本の
アイドル歌手たちのような可愛らしさではない。しっとりして落ち着いている。
音程の多少の不安定さは否めないが、それはご愛嬌として許してしまおう。

もしその後の彼女の音楽に興味がお有りなら、

ライヴ・イン・NY(ポニーキャニオン)

がいいのではないだろうか。

この音楽がどうジャンル分けされるのか僕には分からないが、強いて言えば
ブラジリアン・フュージョン・ポップとでもなるのかも知れぬ。結構落ち着いた感じで
僕は好きだ。「ワン・ノート・サンバ」、そしてもちろん「イパネマの娘」以外は、
渋い目の曲が多い。

僕は、確か ’91年頃彼女のコンサートが大阪であった時に行ったが、
その時と基本的にアレンジ等は変わっていないようだ。

その時彼女は、かなり体の線が出るセクシーなコスチュームを身につけていたのが
印象的だった。当時でも40代後半のはずなのだが、しかしそれがまた余り
違和感が無かった。

きっと彼女は、神様に選ばれた、永遠の「イパネマの娘」なのだろう。


次回はいよいよ、僕の大好きなジョイスの話をしたい。乞うご期待。



最後まで読んでくれて、本当に有難う。ご意見、ご感想等は

hide@helio-trope.com

までどうぞ。「こんな話が聞きたい」というリクエストも大歓迎だ。
(くどいようだが、ここで紹介させてもらう事が有るので、それを希望されない方は
乞うご明記)



それとこのメルマのバックナンバーが、僕のHPで読めるので、

http://heliotrope.s9.xrea.com/

の、「メールマガジンバックナンバー」を乞うご高覧。デワマタ。